霜焼けになってしまった足の指先が痒い。早く帰って足湯したい。
雪の上を疾走しながらそんな事を思う私は、暗部である前に忍失格だと思う。
横を走っていたテンゾウが急に立ち止まった事に気付かないぐらいに霜焼けに念を送っていたのがバレて、頭にチョップを喰らいました。
雪の上に赤い点。それが森の中へと続いていた。
新雪ごとそれを口に含むと広がる鉄の味。テンゾウが若干引いているのが気配で分かった。
「イチゴのカキ氷を食った後のような顔だな」
「どういう顔なのよ」
美味し〜っ、ていう顔らしい。ってか、あんたの表現も可笑しいよ。
私の舌は特殊だ。
一度、舐めたり口に含んだ物を記憶する能力を持っているのだ。
「で、。何か分かったのか?」
「本名で言うなぁ。……ん、先輩の味。 って、だから引かないでよ。」
「今のは色んな意味での引きだよ」
「どういう意味なのよ、パート2」
雑談していても寒いだけなので、その血を追って森へ入る。
「カカシ先輩。居る事は分かっているんだ、観念して出て来なさ〜い」
呆れた視線が横から注がれようがスルーして、この近くに居るであろう先輩を呼ぶ。
すると小枝の擦れる音がして目の前に人が降りてくる。
「おい、こいつどうにかしろ」
「おい、言われてるぞテンゾウ」
「お前だよ」
「誰だよ」
「オレ、こいつが何故暗部にいるのか分からないよ」
「右に同じです」
「大丈夫、本人が一番分からないから」
二つの大きな溜息を頂きました。
「オレが囮になるって言わなかったか?ワザと血を落とした意味がないだろう。追っ手はどうした。」
「あんな手に引っかかる忍は居ないとおも、痛っ!」
「ここに来る前に遭わなかったところを見ると、引き上げたのでしょう」
「持ち場を離れたのか」
「別班が到着し、丁度交代の時期でした」
今回は村の長期警備という簡単な任務だった。何故暗部が指名されたのか分からないが、村人に警戒されないよう警備しろとの依頼らしい。
そして山賊に襲われ数が多かった為、カカシ先輩が囮になり村から山賊を引き離す作戦だったらしい。
交代の暗部が到着したので、私達は先輩を探しに来たという状況だ。
私はテンゾウに叩かれた頭を鏡で確認をしていた。たんこぶ出来てるじゃないか。
文句を言おうと開けた口に入ってきた空気に違和感を感じ、舌の上で分析、報告をする。
「風上から火薬の味。爆弾だと思う」
その言葉に先輩とテンゾウは地を蹴った。勿論私も。
「―― で、ドッカーンと」
「おおおおお!!」
場面変わってここは足湯が出来る憩いの場。
過去のカカシ先輩やテンゾウ―― 今はヤマトと名乗っている隊長の事を聞きたいというので、ナルトに話をしていたところです。
「霜焼けが出来ると思い出すのよね〜」
「で、その後どーなったってばよ?」
「えーっと……」
「お前、何べらべらと喋ってるんだ」
「いくら過去の事だからって、任務内容喋ってどーすんの、」
ナルトの向こう側に彼の隊長であるヤマトが座り、私の横にカカシ先輩が座る。
久し振りに揃う、かつて暗部でスリーマンセルを組んでいた三人。
今は先輩は上忍師に、ヤマトはナルト達の隊長に、私はその時の村長の息子に気に入られて嫁ぐ事が決まっていた。
「あの、先輩。そこ、霜焼けの部分ですけど、痛いんですよね。だから、痛いの。痛いって、このドS!」
「ああ、悪い悪い」
いつの間にか靴を脱いでズボンを捲り上げた先輩が、ほんわか温まった私の足を、しかも霜焼けの部分を的確に踏んできたグリグリと。
すいません、任務内容喋ってすいません反省してますから人前で十八禁本読むのはやめてください。
さてと、と背伸びをしてお湯から出るとナルトがまた話を聞きたいとキラキラした瞳を向けてきた。勿論、ヤマトに怒られていたが。
「ごめんね、明日にはもう里を出ないとだから」
「任務じゃ、しょーがねってばよ」
「違うよ、お嫁に行くの」
ナルトは驚きの声を上げた後、おめでとうと笑顔を添えて祝福してくれた。本当は嫁ぎたくはないんだけどね。
じゃあね。と、手を振った時にはもう私は二人の顔を見れなかった。特に、私の横の人に自分の顔は見られたくはなかった。
多分、酷い顔をしていると思うから。
ナルトは修行すると宣言し勢いよくこの場から飛び出し、残った二人は湯治する老人のように呆けていた。
ヤマトがチラリと先輩を盗み見ると、その視線に気付いた彼は猫背を更に丸め口を開く。
「なーによ、何か言いたげだね。」
「ええ、まぁ。……いいんですか?先輩」
それだけでヤマトが何を言いたいのか察したカカシは、青い空を仰ぎながら独り言のように彼女が決めた事だからと呟く。
「そうですけど。あの顔を見ちゃうと……あいつ、あんな顔もするんですね」
「ま、いつもボケっとした顔で任務してたからねぇ、ってお面で表情分からないじゃない。しかし、どこがいいんだか、あんなの。」
「のドコを気に入ったんでしょうね、村長の息子さん」
「アレだからね〜、と付き合えるのって俺等ぐらいじゃないの?」
「ですよね」
カカシは湯から足を出し手拭で拭いて靴を履く。いつものようにポケットに手を突っ込み、気だるそうに言い放つ。
「じゃ、その息子さんから掻っ攫ってきますか」
「はあぁ!??」
「あれ?今の流れだとそういう流れだよね?」
「…… あーもういいです。頑張って下さい」
「え、君も行くよね?結婚式ぶち壊した時の、あいつの顔見たいでしょ」
ヤマトは溜息をついた。何だろうこの人は。そう、素直じゃないんだ。少々捻くれているんだ。
しかし、結婚式を壊された時の彼女の顔を予想すると、自分に悪戯心がムクムクと出てきているのは認めよう。
そして、自分の想いも認めよう。
先輩がを想う心とは違う想い。
「火影様から説教くらいますかね」
「んー、そんなにオオゴトじゃないと思うし、が居れば何とかなるんじゃな〜い?」
そう言われれば、本当に何とかなりそうな予感がして怖い。
が居ても居なくても里にとっては損得は無い。結婚に関しては損はあるが。
しかし、居ないと心に穴が空いてしまう人がここに二人居る。
それだけでも彼女は里にとって必要な人なんじゃないかと、ヤマトは先に行ってしまった先輩を追い身支度を整ええるのだった。
2012.02.20 こんなヒロインちゃん好きです。続きそうで続かない