少年よ、 彼女を
抱け!!


「なぁゾロ」

「・・・・・・何だよ」

「ヒマだな」

「ああ」


「・・・・・・何アレ、何であんなに枯れてるのよあの二人は!!どうにかしましょうよロビン!!」
「そうね・・・・・・そろそろ一肌抜いたほうがいいかもしれないわ」





「何日目?!」
「・・・・・・は?何がだ、ナミ?」

 急にナミに詰め寄られたのだが、意味が分からん。
 甲板でのんびりと海を眺めていたら、目の前がオレンジで一杯になったのだ。
 首を傾げて聞き返したらデコピンされてしまった。酷い。

「――――ゾロと付き合いだしてからよ!!」
「・・・・・・ああ。そのことか」

「そのことか、じゃないでしょうがッ!!!なんなのよアンタたち!!熟年夫婦みたいな落ち着きみせちゃって、それでも未成年かッ!!
「いや、そう言われてもなぁ・・・・・・」

 ゾロと付き合いだしたのは一ヶ月ぐらい前のこと。前々から薄々勘付いていたのだけど、ある日の宴会にて酔った勢いでなんだか知らんが両想いが発覚して、何となく付き合っている。実際ゾロのことは好きだけど別に『彼氏』って感じはしない。たぶん向こうもそうだ。
 そんなニュアンスのことをナミに言ったら、今度はデコピンじゃなくて拳骨がきた。痛い。しかも気がつけばロビンまで後ろでスタンバイしている。何だ?!どういうことだ?!!

「あのねェ・・・・・・せっかくの色恋要員がアレじゃ面白くないのよ、どうにかしなさい」
「別にいいじゃないか」
「よくないわよ!!!」
「えぇ・・・・・・?」

 ナミがどうしたいのかよく分からないんだが・・・・・・。
 あたしが顔をしかめていたら、ナミは大仰にため息をついた。ロビンは相変わらずニコニコと笑っている。

「え、何アンタ、ゾロとどうこうなりたいという願望はないわけ?」
「・・・・・・考えたことがない」
「大剣豪さんの方はそうでもないと思うんだけど。どうかしら?」
「はい?」
「男が彼女とどうこうなりたくないワケないでしょうが」
「そりゃあないだろう。だってアレだ、ゾロだぞ。寝ることと修行と酒にしか興味のない大剣豪だぞ
「ハァ・・・・・・」

「そうね・・・・・・じゃあ、こうしたらどうかしら」

 ロビンがにっ、と綺麗に笑ってナミに耳打ちをした。

 ・・・・・・こんな綺麗な人が彼女だったら、男もどうこうしたくなるんじゃなかろうか。




「・・・・・・は?!」

「あらゾロ、遅かったわね。船長がお待ちかねよ」
「昼寝でもしてたのか?」
「相変わらずだなァ」
「ゾロぉ!!早くしろよなァ!!!俺もう死にそうだぞ!!」
「・・・・・・ってそうじゃねェだろうがァ!!!お前・・・・・・ッ」
がどうかしたのかしら?」

 ナミが黒い笑顔で俺を見た。

 昼食の時間だからとクソコックに叩き起こされ、寝ぼけながら食堂に辿り着いた俺が、ドアを開けて最初に見たのは、だった。一応。・・・・・・だが、


何で、――――ビキニにパーカーだよお前は?!!!


 しかも結構面積がヤバい。申し訳程度に羽織ったパーカーは薄手で、白い肩も透けて見える。ルフィなんかはあまり気にしてないようだが、あのクソエロコックの視線がさっきからチラチラとに向かっているのがよく分かった。

何を考えてるんだアイツは・・・・・・!!!


「じゃあ、食べましょうか」
「おうっ!!」
「ど・・・・・・どうしたゾロ。席についたらどうだ?」
「・・・・・・ああ」

 非常に・・・・・・何と言うか・・・・・・あー、くそ。
 であんまりそういうこと考えないようにしてたんだがな・・・・・・。

 俺の席はの真正面で、嫌でも視界に入ってくる。いや、別に嫌なワケではないけども。
 ただ、その・・・・・・ソースを取るときに前のめりに手を出すとかそういう精神攻撃はやめて欲しい。ナミとロビンが終始ニコニコしているので何となく予想はつくが、これは鬼だろ。
 相変わらずエロコックはの方ばかり見ていて、殴り飛ばそうかと思った。

 俺が一人で苦しんでいたら、サラダを食べ終えたナミがサンジの方を向いた。

「ねェ、サンジ君。・・・・・・このあとでいいから、ちょっとに料理教えてあげてくれないかしら」
「は・・・・・・ぐっ」

 ・・・・・・はァ?!

 ナミの発言に俺が目を剥くのとほぼ同時、が声をあげかけたがロビンの能力で口を塞がれた。クソコックは目を瞬いていたが「分っっっっかりましたぁぁああああ!!!」とか叫んだらしい、聞いてなかった。

 ナミが急に振り向いた。俺と視線を合わせてニヤリと笑う。

 ・・・・・・クソ野郎。

「「「「ごちそーさまでしたっ!!」」」」




で、ここのタイミングでコレを入れて・・・・・・」
「ほう。なるほど、了解」
「・・・・・・上手いねちゃん。コレだったら俺が教えることはあんまりなさそうだ」
「そんなことはないぞ、たぶん」


どうしてこんなことに!!!近い!!!


 ナミが突然言い出した『サンジに料理を教えてもらう』は、初耳もいいところだった。しかもワケも分からぬまま布切れみたいな小さいビキニに着替えさせられたし。何なんだよ本当に!!

 サンジに教えてもらうのはいいんだが、いかんせんサンジが近い。キッチンが狭いからしょうがないけども。

 しかし・・・・・・いたたまれない。

 ナミはこれで、『ゾロがあたしとどうなりたいか』が分かると豪語していた。・・・・・・現在はゾロが関係ない気がするんだが気のせいだろうか。


「・・・・・・ちゃん、聞いてた?」
「あ、いや・・・・・・ごめんな、聞いてなかった。もう一度頼む」
「ニンジンはもうちょっと細かく切ってね。・・・・・・指、気をつけて」
「へ?あ、ああ・・・・・・、ッ!」

 あ・・・・・・しまった、切ったか。

 指をつうっと血が伝う。サンジが「だから言ったのに!」とあたしの手首を掴む。ぐっと引っ張られて、――――


 そのとき、キッチンのドアが開いた。


「・・・・・・ゾロ?」

「・・・・・・」


 入ってきたのはゾロだった。無言、しかめっ面でスタスタとこっちに歩いてきて、サンジの手からあたしの腕を引き戻した。そのまま今度はゾロに掴まれる。


「たく・・・・・・お前はどうしてそういいトコロでくるんだよクソマリモ!!」
「うるせェ、こいつ貰うからな」
「・・・・・・しょうがねェな。ちゃん、襲われないように気をつけるんだよ?!分かった?!」

「は?え?何だこの状況」


 あたしはいつの間にか食堂の外に、甲板に引きずり出されていた。


「おい、ゾロ?!手首をそろそろ放せ。というか何なんだよコレは」
「ダメだ。誰が放すかバカ」
「バカとは何だこのクソ剣士・・・・・・で、何だよ本当に」
「お前な、バカだろ」

 ゾロがあたしを見下ろして呆れたように言う。失敬な。
 多少カチンときて睨むと、ニ倍返しで睨まれた。

「ナミとロビンのいいように動きやがって・・・・・・しかもクソコックと密室とか何考えてんだ、脳みそ足りてるか?!
「は?・・・・・・えっと意味が分からない」

「あー!!だァーもう!!だから!その格好は何だよ!!完全に誘ってんだろうが!!犯すぞコラ!!」

「狽ィかっ・・・・・・?!!」
「人がどんだけ苦労してセーブしてたと思ってんだよ・・・・・・アッサリ引っかかりやがって、アホか」
「あ、え、えっと・・・・・・あの、ロロノア君?セーブというのは」

 あたしが恐る恐る聞くと、アホか、と繰り返してからチョップを落としてきた。

「あのなァ、お前がソッチ方面に興味がないとかぬかすから待っててやったんだ。一ヶ月付き合っててキスもなしとかガキか。つーかガキでももうちったァ、マシな恋愛してるだろうがよ!!」
「そうなのか・・・・・・?」
「しかもクソコック、よりによってあンのエロコック・・・・・・!!」
「うわ・・・・・・いや、ごめんなゾロ、まさかそういうものだとは思わなくてだな」

「タイムアップだ。言い訳はベッドの上で聞く」

「買nァ?!!!ちょっ、待て!!待つんだゾロ!!!!」

「さんざん人を待たせておいてまだ待てとか言うか!!いい加減限界だからな、覚悟しろよ!」
「だっ、だから・・・・・・ッ!!って、え?!本気?!本気なのか?!!おいちょっと!!」

 あたしはそのまま引きずられて、男子部屋に連れ込まれました。・・・・・・理不尽だ!!




(で、どうだった?
(・・・・・・ナぁぁあああミぃぃいいいいッ!!!!)



彼方様より